◎スティディカムと言えば、そのスムースなカメラワークや振動の少ない撮影画面は、あまりにも有名です。しかしながら市販品は構造も複雑な上に、価格も高価なものがほとんどです。
※今回、私はこのスティディカムの試作に挑戦しました。実際のスティディカムは、とても高価でスティディカムジュニアでさえも約14万円ほどの定価ですので、私たちアマチュア映像作家には簡単に入手出来るものではありません。そこで既に販売されているグライドカムを参考にして、市販のスチールカメラ用一脚をうまく活用して、一脚スティディカムとして試作してみました。
- 基本コンセプト
今回試作するにあたり、市販の一脚を活用してアマチュアでも簡単に製作が出来て、もちろん周辺のメカ部分も安価な入手しやすい材料を用いること。また、使用するスチールカメラ用の一脚には、穴をあける等の加工を一切しない。さらに重量は可能な限り軽くすると共に、もちろんそれなりの効果も期待できることを念頭に入れて設計を行いました。搭載するカメラは、最近のDVCタイプとして、液晶モニターが搭載されていることを前提とします。すなわち、別途専用モニターを入手しなくても良いということです。- グライドカム等のメカ部分の検証
すでにインターネット上で公開されている、メーカーの写真やカタログを徹底的に検証しました。さらにアマチュアカメラマンの手製のものも吟味しました。どれも特色のあるもので、製作者の工夫が満ちあふれていました。そんな中で、私はスプリングバネ材を防振材として活用することを思いつきました。これだと、シンプルな構造にできますので、比較的簡単に製作できそうです。- 設計イメージ
基本的な構造は、下記イメージ図を参照下さい。構造的には特に難しい原理は使用しておりません。単純にいうと、一脚部分本体をスプリングバネを用いて軽く固定するといったイメージですね。
- 材料集め
一般的なホームセンターで入手可能な材料を用いています。主な材料は、下記の通りです。自宅近くのホームセンターでは、幸いにも数多くのスプリングがありましたが、ここでは工作等に使われる 引きバネ を用います。もちろん、スチールカメラ用の一脚が別途必要です。一脚以外の総材料費としては、1500円で十分にお釣がきます。
材料名称 仕様・長さ 数量 備考 アルミ板 100(たて)×100(横)×2(厚み) 1枚 厚みは1.5mmでも可 アルミLアングル 15×15×1000(切断して使用) 1本 − ビス・ナット M3×8、M3×10、M3×15 各数本 − 水道用ホース留め具 24〜28φ用(一脚の太さに合わす) 1個 PD21−20(三栄製) スプリング 0.65×8×30(ステンレス製) 8個 SR−405(藤村製) インシュロック 長さ150mm 数本 − 木製取手 ネジ間の長さ96mm 1本 TW−10(WAKI製)
◎使用スプリングの一例
◎アルミ部分の加工参考図面を下記に置きます。
クリックして、拡大表示したものを参照して下さい。(JPG:約60KB)
- 加工ポイント
一番やっかいなのが中央部分の穴あけでしょうか。私は糸のこを用いて注意深く慎重にゆっくりと穴をあけました。その他の穴あけは、ハンドドリルを用いました。工作用の卓上ボール盤があれば、ベターでしょう。なお加工後には、見栄えを良くするためにペーパーを用いて丁寧に切断面の表面処理を行います。以下の写真は、加工の済んだアルミ材料です。
- 組み立て
組み立てはいたって簡単です。外観写真と図面をご覧下さい。ポイントは、支点の位置とスプリングの強さ、おもりの重量だと感じました。一例として、ソニーのビデオカメラ:DCR−TRV20を用いた場合には、上部から約50mmのところを支点として、最下部のおもりは古単二乾電池を7個(約500g)用いることで全体のバランスを取って最適化を図りました。この時点でビデオカメラを搭載した全体の重さは、約4Kgになります。このままでは外観的にアルミの地金色のままですので、全体を黒く塗装すればかなり見た感じも違ってくると思います。
◎一脚に水道用留め具を通した状態。本体にはビニールテープを巻き付けて、表面を保護してあります。薄いゴムシートでも良いと思います。ここにスプリングを6〜8ヶ所引っかけて、各スプリングの位置合わせをしてから蝶ネジを締め付けて固定します。
◎今回使用したアルミLアングルと木製取手部分です。取手の一ヶ所だけをM4ネジで固定します。
◎アルミ部分を組立てて、スプリングにて一脚に装着した半完成品。
右は裏から見た、スプリング取り付け部分の拡大写真。ここでは6個のスプリングを使用しました。
- 使用方法
取りあえずカメラをセットして屋外で走って撮影してみた結果、予想以上の効果に驚いています。しかしながら、若干のトレーニングは必要でしょう。特に意図的に傾いた映像を連続的に撮影する場合は、グリップ部分と本体の傾き加減が微妙に影響し合います。できるだけ、スプリングを張った状態で撮影するのが良いようです。また実際の映像を見た感じでは、早く移動した時の方が独特の映像感覚が際だっているように感じました。なおグリップ部分にビデオカメラのリモコン本体を装着させて、このリモコンでカメラ本体を操作する方法も考えられます。余談ですが、河原で撮影実験をしていると近くで釣りをしていた方が集まってこられ、この一脚スティディカムを説明するのに苦労しました。- 注意点等
製作にあたり重要なポイントは、下記の内容と思われます。試作する上で、何度もカットアンドトライを行った部分でもあります。
- スプリングの選択:ビデオカメラと一脚の総重量を考え合わせ、数種類のスプリングを購入して、本数やスプリングの強度を調整します。経験的に私のカメラでは、8ヶ所全てのスプリングを使用せずに6ヶ所だけでも十分効果が得られています。
- おもりの最適化:取りあえず使用済みの単二乾電池を活用して、ガムテープで固定しました。テストの結果、支点の位置によっても安定感に差があるので、ベストポジションを実験的に割り出します。おもりの重さが最終決定した時点で、見栄えの良いものを探そうと考えています。
- 終わりに
今回は試作した一脚スティディカムをご紹介しましたが、アマチュア映像作家やアマチュアビデオカメラマンの皆様に参考になればと思います。この試作品をベースにして皆様方独自の改良工夫を重ね、さらにグレードアップした一脚スティディカムを作成していただけたらと思います。なお一般的な免責事項としては、@この一脚スティディカムを製作、使用して発生した、いかなる障害にも一切の責任を負いません。A撮影にあたっては、他の交通機関等に十分注意していただき、万一人身生命に関わる損害が生じても当方は関知いたしません。よろしくお願い致します。